物理十話 第二話:自然の幾何学(アンコール回)

新講座

江本 伸悟講師

物理十話 第二話:自然の幾何学(アンコール回) について

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物理十話

布団のなかで目を瞑ると、時々ふと、紀元前の星空がまぶたの裏へと浮かんでくる。地上の闇が、鋭い都市の光ではなく、柔らかな星の光に灯されていたあの頃、夜空を隙間なく敷きつめる無数の星々は、今よりずっと深い煌めきをもって人々の眼に映り込んでいた。

星雲から放たれる光は、バビロニアの砂漠の上にも、ギリシャの地中海の上にも、地球上のどこにも等しく降りそそぐ。その畏怖すら覚える静かな光に誘われて、世界中の眼差しが夜空に交差していた時代である。

こうして星空へと向けられた眼差しは、やがて星空に対する思索を引きおこし、ついには物理学の前身となる星の学問、すなわち天文学としてその実を結ぶことになる。物理学の心は、この深遠なる夜空の輝きに端を発する。

天文学に限らず、眼差すことと、思索することとは、案外近い関係にある。実際、理論(セオリー)という言葉の語源であるギリシャ語のテオリアには、考察と観照というふたつの意味が込められている。人は、脳で考えるだけではなく眼でも考える。言葉を通じて考えるだけではなく、眼につよく訴える形を通じて考える。文章によって思想を表現するだけではなく、造形によっても思想を表現する。

そう思うと、形の学問である幾何学というものが、なにか眼差しによる思想の体系として感ぜられてくる。「形」を通じて自然について考えること、言わば「自然の幾何学」が第二話のテーマである。ユークリッドの数学、アルキメデスの物理学、ガウディの建築など、幾人もの天才によって「造形されてきた思想」を取り上げ、彼らの眼差しの先にあったものを感じてみたいと思う。

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物理十話 第二話:自然の幾何学(アンコール回) 講座情報

講座名
物理十話 第二話:自然の幾何学(アンコール回)新講座
講師
江本 伸悟講師物理学者
日時
2014年10月31日(金)
18:30-20:30
場所
記憶の蔵
文京区千駄木5-17-3
JR西日暮里駅徒歩13分
千代田線千駄木駅徒歩8分
参加費
3500円
定員
定員未定

『物理十話』について

物理学とは何でしょう。
それは、この世界の真理に触れんとする学問のようでもあり、この世界の美しさを描きださんとする芸術のようでもあります。またそれは、頭をつかって物事を考えていく思索のようでもあり、身体をつかって物事に触れていく行為のようでもあります。

いずれにせよ物理学においていちばん大切なことは、その眼差しのさきにこそあります。
私たちが棲まうこの世界、その豊かな表情に覚醒していくこと、そのための学問であり、芸術であり、思索であり、行為です。

本講座では、物理をめぐる十話を通じて「物理とは」を問い掛けることで、
みなさまと眼差しを重ね、「物理学の風景」を共有していきたいと思っています。
一話一話は独立したテーマを扱っており、それぞれが単独で楽しめるようになっております。