数理統計学入門 第3回

新講座

林 祐輔講師

数理統計学入門 第3回 について

この講座は終了しました。

数理統計学入門

第3回

相関係数は統計学で最も基本的な概念の一つです。この概念は、1888年、チャールズ・ダーウィンの従兄弟であったフランシス・ゴルトンによって発見され、その弟子であるカール・ピアソンによって数学的に定式化されました。カール・ピアソンは、因果関係とは人間の経験に基づく曖昧な概念であり、我々は物事の因果関係について考える代わりに数学的に厳密に定義される相関関係を問うべきだと考えていました。現代統計学の創設者であるカール・ピアソンがこのような考えをもっていたために、今日に至るまで統計学において因果関係が議論されることは稀です。
しかし、因果関係を数学的に定式化しようとする試みが全く行われていない訳ではありませんでした。1980年代後半、人工知能の研究者であるジュディア・パールは、ロボットが自律的に行動するためにはロボットに物事の因果関係を学習させる必要があることに気づき、従来の確率論に「介入=観測値の変換」という概念を導入することによって因果関係を数学的に定式化することに成功しました。iPhoneの音声アシスタント「Siri」、Googleの「セマンティック検索」やクイズ解答マシンの「ワトソン」など、最近実用化されたAIは全てこの理論に基づいて開発されています。この新しい理論を使うことによって、我々は因果関係を分析することが出来るようになったのです。
今回の講座では、このジュディア・パールが創始した統計的因果推論について紹介します。 当日は、スライドを使ってお話をするので、特に何の用意も必要ありません。肩の力を抜いてお越し下さい。では、宜しくお願いします。

ーーーー前回の講座ーーーーーーーーーーー

第2回 相関係数から階層ベイズモデルへ(1)

前回の講座では、前年比や寄与度分解、後方移動平均といった時系列データの加工法を紹介しました。
講座に参加していただいた方には、未加工の時系列データにシンプルな操作を加えることで、そのデータの変化の特徴がみえてくることを確認していただきました。
しかし、実際にデータを使って何らかの仮説を検証しようとすると、上に挙げた道具だけではうまくいきません。データを使って仮説を検証するとき必要となるのは、
原因と結果という2つの種類のデータを対応づける統計学のツールです。そこで今回の講座から数回かけて、統計モデルの考え方を紹介していきます。

まず今回の講座では、2つのデータの「近さ」を測る最も基本的な量である相関係数について説明し、そこから徐々に統計モデルの主要な部品である確率分布や
統計モデルをデータにあてはめてパラメーターの推定値を得る方法である、最尤推定の考え方を紹介して行きます。
ここで紹介する考え方を一つずつ身につけていくことで、自分で統計モデルを構成し、観測によって得られたデータを最もよく説明するモデルを選択できるようになります。
— 今回の講座から、受講者の方にはレポート作成、またはドリル形式の宿題のどちらか、あるいは両方を選択していただき、次回の講座までに持ってきてもらうことにします。
面白いレポートや問題の解き方があれば、講座の途中で他の皆さんの前で発表していただきたいと思っています(もちろん、第3の選択肢として「何もしない」もありです。
お気軽に。笑)。

当日、皆様とお会いできることを楽しみにしております。

予約受付終了

数理統計学入門 第3回 講座情報

講座名
数理統計学入門 第3回新講座
講師
林 祐輔講師研究者
日時
2013年12月1日(日)
13:00-14:30
場所
都内古民家(鴬谷/入谷)
(お申し込みいただいた方に詳細お送りいたします)
参加費
¥3500
定員
定員未定
備考
●14:30-15:30
【ヴァイオリニストと実験タイム(投げ銭制)】もあります!
NOTH「音語り」講座の本郷講師が、脳波(EEG)を測定するヘッドセット等を装着し、演奏してみます。その場で得られたフィジカルデータの統計的性質を分析してみます。演奏のときに、脳波はどのような反応をしているのでしょうか!


●実際にエクセルを利用しながら受講することも出来ます。
ご希望の方はエクセルがインストールされているPCをお持ち下さい。

『数理統計学入門』について

この講座では、データ解析を行う際に必要な統計学の基礎知識を紹介します。
講座の初めの方では、グラフを使ってデータを視覚的に表現する方法を確認したり、前年比や相関係数といった概念を紹介し、
データの操作に馴染むところからスタートします。そこから徐々に、t検定や回帰分析といった一般化線形モデルのツールを使って、
データが備えている傾向性を読み解くレッスンを行っていきます。

また、講座の後半では、政府統計やWeb上にあるオープンデータを使って、参加者の方に、自分で仮説を検証する作業も
体験してもらいます。