音語り ガット弦による弦楽四重奏の夕べ 〜モーツァルト、シューマン

定期講座

本郷 幸子講師

音語り ガット弦による弦楽四重奏の夕べ 〜モーツァルト、シューマン について

この講座は終了しました。

音語り

ヴァイオリン2本、ヴィオラ、チェロで構成される
弦楽四重奏は、ソプラノ、アルト、テノール、バスと、音域的にも余すところなく重厚な響きを実現し、アンサンブルとして、小さいながらも、大変充実した形と言えます。この編成が拡大し、コントラバスが加われば、弦楽合奏が、そして、管楽器群、打楽器群が入るとオーケストラが誕生します。

古代ギリシャでは、土・空気・火・水が、四大元素とされていましたが、オーケストラという巨大なファミリーの元素が、4つの弦楽器からなると考えてみると、そのアンサンブルから生まれるものの
面白さや、多様性が見えてくるようです。

ゲーテが「弦楽四重奏を聞いていると、まるで4人の頭脳明晰な人が歓談しているのを聞いているような気がする」と言っていたように、各声部が独立していながら、響きの上でもより均質で濃密なアンサンブルは、親しい人たちの豊かな談話のようでもあります。

その弦楽四重奏というジャンルが、通奏低音の時代から、どのように解放され、生まれたのか。その歴史に少しふれながら、講座は始まります。

さて、音語りで今回もとりあげる天才モーツァルトは、同じく大作曲家であるハイドンを大変敬愛していました。弦楽四重奏のスタイルの礎を築いたハイドンは、「弦楽四重奏の父」とも呼ばれますが、そのハイドンの手法から多くを学び、誕生したのが、6曲からなる弦楽四重奏曲「ハイドン・セット」です。

速筆であるモーツァルトが、2年あまりをかけて
作曲したその曲集は、「長く困難な苦労の果実」との言葉とともに、ハイドンに捧げられ、今でも、大変な傑作として世界中で親しまれています。

今回とりあげるのは、その曲集の1番目の曲。とても爽やかな春風のような美しい、その曲を、少しだけ、声部ごとや、テーマを抜き出して演奏して、どんな風に楽曲が構成されているかをお話します。

前半にモーツァルトを堪能していただいてから、後半は、今回はじめてとりあげる、シューマンの登場です。

幼い頃から、文学や音楽に親しんでいたシューマンは、作曲のみならず、音楽評論家としても、活動しました。ある期間、あるジャンルを集中して作曲する特徴があり、激しい反対を押し切って結ばれたクララとの結婚のあとには、「詩人の恋」などの名作が生まれた「歌曲の年」(1840年)。その翌年1841年は、「交響曲の年」そして、その翌年1842年は、ピアノ五重奏を始め、多くの室内楽曲が作曲されました。

シューマンには、3曲の弦楽四重奏曲がありますが、そのどれもが、やはりこの年に書かれています。今回とりあげるのは、第3番。

後に、精神に異常を来たし、ライン川に入水自殺を図ったシューマンの心の翳りは、それほど見受けられないものの、ドイツロマン派の薫り漂う、繊細で、大変美しい曲となっています。

あまり演奏されることのないこの曲を、これまたあまり試されることのないガット弦での弦楽四重奏の響きでご堪能ください。そこには、きっと、古い映画を観るときのような独特の手触りと風景が広がると思います。

予約受付終了

音語り ガット弦による弦楽四重奏の夕べ 〜モーツァルト、シューマン 講座情報

講座名
音語り ガット弦による弦楽四重奏の夕べ 〜モーツァルト、シューマン定期講座
講師
本郷 幸子講師ヴァイオリニスト
日時
2015年8月23日(日)
19:00-21:00
場所
Studio Andantino 第3スタジオ(1階)
東京都北区田端 5-1-12 Villa Andantino
JR「田端」駅 北口 徒歩3分
参加費
3500
定員
定員未定
演奏曲目
モーツァルト / 弦楽四重奏曲 第14番 ト長調 K387
第1楽章 Allegro vivace assai
第2楽章 Menuetto. Allegretto – Trio
第3楽章 Andante cantabile
第4楽章 Molto allegro

シューマン / 弦楽四重奏曲 第3番 イ長調 Op.41-3
第1楽章 Andante espressivo – Allegro molto moderato
第2楽章 Assai agitato – Un poco adagio – Tempo risoluto
第3楽章 Adagio molto
第4楽章 Finale: Allegro molto vivace -Quasi Trio
出演
Quartetto Oceano

東京芸術大学で同時期に学び、横浜シンフォニエッタのメンバーとしての公演、またその他多くの演奏会で共に演奏している仲間で、2015年8月に結成。バロック時代から近現代まで幅広い時代の作品をレパートリーとするメンバーだが、中でもオリジナル楽器による演奏に興味を持って取り組んでいる。作品が作曲された当時の音色や世界感を再現、追体験することを試みるために、古典派の作品はもちろんのこと、ロマン派以降の弦楽四重奏作品もガット弦で演奏することを目指している。果てしない大洋のように、時に激しく時におだやかに、音を通して大いなるものとつながっていけるようなアンサンブルをと想いを込めてQuartetto Oceanoと命名した。

廣海 史帆(ひろみ しほ Violin)
本郷 幸子(ほんごう さちこ Violin)
伴野 剛(ともの ごう Viola)
懸田 貴嗣(かけた たかし Violoncello)

『音語り』について

音楽は予備知識がなくても楽しめてしまうのが魅力でもありますが、この講座では、文字通り「音と語り」で、その世界をより深めていきます。間近で聞く生の音色はひとあじ違います!どうぞお楽しみください。

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音楽は音の織物。

その完成品を味わうだけでなく、その糸がどう紡がれたのかを紐解いて、共に学び、発見し、深める場をつくれたらという思いで、音語りを始めました。「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに」という井上ひさしさんの言葉を胸に。音楽の世界の新しい扉が開かれ、より親しみを持っていただけたら幸いです。

※この講座は、演奏だけではなく、毎回違うテーマに沿って様々なお話を入れながら進みますので、通常の演奏会とは異なります。その点をご理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。